フィラリアを知ろう
フィラリアってどんな虫?
その生態、生涯について
犬糸状虫とも呼ばれるフィラリアは、蚊が媒介して犬の肺動脈や心臓に寄生し、全身の血液循環や内臓にも深刻な障害を与える恐ろしい虫です。その健康被害から愛犬を守るために、フィラリアの生態について理解しておきましょう。
フィラリアの生態

犬の末梢血液中のミクロフィラリア
写真提供/サエキベテリナリィ・サイエンス 佐伯英治 先生
フィラリア成虫は、オスで体長約17cm、メスで約28cmと細長く、乳白色のソーメンのような形をしています。フィラリアが成虫となるには、フィラリアを媒介する蚊の体内でミクロフィラリアから感染力を持つ幼虫へ発育することが必要で、日本では約16種類の蚊※がフィラリアを媒介します。これらの蚊が犬の血を吸う時に、フィラリアの幼虫が犬の体内に侵入し、寄生します。また、犬だけでなく猫や人への感染も報告されています。
※日本でフィラリアを媒介する16種類の蚊:アカイエカ、コガタアカイエカ、チカイエカ、カラツイエカ、ネッタイイエカ、ヨツボシイエカ、トウゴウヤブカ、ヒトスジシマカ、キンイロヤブカ、ネッタイシマカ、ホッコクヤブカ、アカンヤブカ、チシマヤブカ、カラフトヤブカ、シナハマダラカ、アシマダラヌマカ
フィラリアの一生(ライフサイクル)と犬への寄生
フィラリアは、蚊の吸血によって犬の体内に侵入し、約6~7カ月で幼虫から成虫に成長します。フィラリアが成虫となり、犬の肺動脈に寄生すると、深刻な症状を起こすようになります。
フィラリアのライフサイクルと犬への寄生

ミクロフィラリア
体長:307~322μm
フィラリアに感染している犬(感染犬)の体内で、メスのフィラリア成虫がミクロフィラリアを産み、それが感染犬の血液中に流れる。そうした感染犬を蚊が吸血した際に、血液と一緒にミクロフィラリアが蚊の体内に入る。
幼虫
体長:約0.2mm
蚊の体内に入ったミクロフィラリアは、第1期幼虫から第3期幼虫(感染幼虫)へと成長する。第3期幼虫は蚊の口吻(こうふん:吸血針の部分、吻鞘ともいう)に移動して、感染の機会を待つ。
非感染犬
蚊が吸血する際に、第3期幼虫(感染幼虫)が犬の体内へ侵入。皮下組織や筋肉・脂肪などで、約2~3カ月かけて発育を続ける。
成虫
心臓の右心室から肺動脈に寄生。約6~7カ月で成熟して、ミクロフィラリアを産むようになる。
フィラリアを媒介する蚊の種類
主に昼間に行動するヒトスジシマカ、夜に行動するアカイエカなど、媒介する蚊は日本で16種類が知られています。以下に代表的な蚊をご紹介します。
ヒトスジシマカ(ヤブカ)

ヒトスジシマカ
背中の部分に白い線があるのが特長で、体長は約5mm。明るい間に活動し、夜は活動しない。小さな水たまりなどがあればどこでも産卵する。本州(東北南部以南)から四国・九州に分布している。
アカイエカ
住宅地に多く、夜に吸血する蚊の代表。胸のあたりが淡赤褐色で体長約5.5mm。活動時間は主に夜から明け方。人間や鳥類の血を好んで吸う。幼虫は下水や水たまりなどを発生源としている。日本全土に分布している。
チカイエカ
ビルの地下の水たまり、地下鉄の線路わきの溝、排水溝などを発生源としている。成虫は冬でも活発に活動する。アカイエカに似ているが生態的には異なる部分が多い。