
内外寄生虫が人に感染して起こす症状
犬・猫におなじみの内外寄生虫は、ヒトに感染した場合にも、さまざまな症状を引き起こします。
どんな病気があるかチェックしてみましょう。
脳 brain
犬回虫幼虫移行症
犬回虫の幼虫が体内を移行して脳に達すると、てんかんのような発作を起こします。
眼 eye
犬回虫幼虫移行症
犬回虫の幼虫が眼に移行すると、眼各部の炎症や硝子体の濁り、網膜剥離による視力障害、蚊が飛んでいるように見える飛蚊症、視界にモヤがかかったような霧視など、さまざまな症状が引き起こされます。重症の場合は失明の可能性もあります。

犬回虫の幼虫により視神経乳頭の近くに形成された肉芽腫の移動が見られました
提供:愛媛大学医学部眼科 鈴木崇先生
リンパ節 lymph gland
猫ひっかき病
ノミが媒介するバルトネラ菌に感染した猫や犬に咬まれたり、ひっかかれることで感染。リンパ節の炎症や発熱などの症状が見られます。

左腋窩リンパ節の腫大
提供:公立八女総合病院長 吉田博先生
肺 lung
犬回虫幼虫移行症
犬回虫の幼虫が肺に入ると、咳や喘鳴(ゼイゼイする音)が引き起こします。
フィラリア症
フィラリア(犬糸状虫)の未成熟虫が肺動脈でコインのようなコブをつくり、咳などの呼吸器症状を引き起こします。

右下肺野の銭形陰影
提供:東京医科歯科大学大学院 藤田紘一郎先生
心臓 heart
犬回虫幼虫移行症
犬回虫に感染すると、心嚢(心臓のまわいにある袋)の水が必要以上にたまり、健康に支障をきたすことがあります。また心臓自体の膨張も見られます。

心嚢水が貯留したトキソカラ症患者の心エコー像
提供:東京医科歯科大学大学院 赤尾信明先生
肝臓 liver
エキノコックス症
多包条虫(エキノコックス)の幼虫が肝臓に侵入して、徐々に肝機能障害が進行。末期には重度の肝機能不全に陥り、死に至った症例があります。

エキノコックスが寄生し組織が壊死したヒトの肝臓
提供:北海道大学医学部付属病院 佐藤直樹先生
環境動物フォーラム 神谷正男先生
腎臓 kidney
犬回虫幼虫移行症
犬回虫の感染がきっかけとなってネフローゼ症候群が引き起こされ、死に至ることがあります。
全身症状 body
Q熱
マダニが媒介するコクシエラ菌が、マダニによる吸血時に体内で入ることで感染します。主にインフルエンザに似た高熱や呼吸器症状、肺炎などのほか、慢性の場合は疲労感、慢性肝炎、心筋炎などを引き起こします。うつ病などの精神的な疾患と間違われることもあります。
ライム病
マダニが媒介するボレリア菌が、マダニによる吸血時に体内に入ることで感染します。主に赤い丘疹(マダニに咬まれた部分を中心とする遊走性紅斑)が特徴的にみられますが、発熱、関節痛などのインフルエンザ様の症状を伴うこともあります。放置すると、心膜炎や顔面神経麻痺などが起こることもあります。
日本紅斑熱
マダニが媒介するリケッチアが、マダニによる吸血時に体内に入ることで感染します。主に39~40℃以上の高熱とともに、手足や顔面などに発疹(紅斑)が多数現れます。重症例では死亡例も報告されています。
皮膚 skin
犬回虫幼虫移行症
犬回虫の幼虫が皮膚に移行することで、かゆみのある皮疹を発症。皮膚の部位そのものに幼虫の存在が認められます。

犬回虫に感染して足首付近に現れた皮疹から、幼虫を確認
提供:済生会千里病院内科 荒金和美先生
ノミ刺咬症
ノミが吸血する際に皮膚を刺して、血が固まらないように唾液を分泌することで、強いかゆみを引き起こします。皮膚に直径1cmほどの紅斑(赤い斑点)や丘疹ができ、かゆみが強いため、ひっかくことで二次感染を起こし、化膿がみられることも。まれに、コブ(結節)や水ぶくれ、血疱なども見られます。

ノミ刺咬症になった人の足
提供:林正幸先生

ノミの吸血によって生じた紅斑や丘疹
サエキベテリナリィ・サイエンス
提供:佐伯英治先生